8. 数 (Grammatical Number)

プリャンナにおける「数」の範疇は、名詞的トークン(および名詞化された句や節)に付与され、その対象の様相、まとまり方、特定の構造、あるいは量的な性質を明示する。単なる個数を示すだけでなく、話者の認識や意図、対象の概念的な捉え方を反映する。

No. 接辞 役割 概念的特性
1. 単数 (Singular) -a 個体としての単一性、概念の普遍的形態。 独立、抽象的普遍性。
2. 双数 (Dual) -ei 二つの関連する組、相互作用、対比を持つペア。 構造を持つ二要素。
3. 鼎数 (Trial) -ai 三つの構造を持つ組、安定した関係性、機能的な三つ組。 構造を持つ三要素、鼎立。
4. 四数 (Quadruple) -oi 四つの要素が統合された、より複雑な全体や体系。 構造を持つ四要素、統合。
5. 特定多数 (Specific Plural) -i 数自体が具体的、または文脈から特定可能な多数の集まり。 具体的な集団、共有認識のある集団。
6. 不特定多数 (Indefinite Plural) -u 数が不明、または個々の要素に焦点を当てない、一般的な多数。 包括的な全体、無数の散在。
7. 分量数 (Partial Number) -a˜ 離散的な整数では表せない、連続的な量の部分。 非整数的、中途半端な量、不完全性。

8.1 単数 (Singular)

形式: -a [a]

個体としての単一性、つまり一つの独立した存在を示す。また、その概念の一般的な形態、あるいは集合全体の代表としての「一つ」を指す。特定の数に縛られない、抽象的な概念の普遍的な側面を表す場合にも用いられる。

用例:

  • √’ay-a (人間-単数): 「一人の人間」、または「人間(という存在全般)」
  • √thauw-a (水-単数): 「水(という物質そのもの、普遍的な水)」
  • √hĩb-a (知識-単数) : 「知識(という概念全体、普遍的な知識)」

8.2 双数 (Dual)

形式: -ei [ei]

二つの関連する組、相互に関係し合う二つの要素、対となるもの、ペアを示す。単に「二つ」という個数だけでなく、その二者間に特定の結びつきや対比、相互作用があることを含意し得る。例えば、数学における「順序対」や、二つの論理項の関係性など、構造を持つ二要素の組を表現する際に用いられる。

用例:

  • √’ay-ei (人間-双数) : 「二人の人間(夫婦、親子、ライバルなど、関係性を持つペア)」
  • √k’as-ei (目-双数) : 「両目」
  • √hĩb-ei (知識-双数) : 「相互に関連する二つの知識(例:理論と実践)」

8.3 鼎数 (Trial)

接辞: -ai [ai]

三つの構造を持つ組、三つの要素が特定の構造や安定した関係性を持って「鼎立する」ことを示す。単なる「三つ」という個数を超え、三位一体、三段階のプロセス、三つの柱など、機能的なまとまりを強調する。3次元座標 (x, y, z)、三項述語構造の各要素、三段論法の構成要素など、特定の構造を持つ三要素の組を表現する際に用いられる。

用例:

  • √’ay-ai (人間-鼎数) : 「三人の人間(特定のチーム、家族など、機能的な三つ組)」
  • √thauw-ai (水-鼎数) : 「水の三態(固、液、気)」
  • √g’yoïy-ai (概念-鼎数) : 「三つの関連する概念(例:思考、感情、意志)」

8.4 四数 (Quadruple)

接辞: -oi [oi]

四つの要素がそれぞれ独立しつつも、より複雑な全体や体系を形成することを示す。多様な側面を持つ四つの要素の統合や、四元数のような概念に用いられる。4次元時空の座標 (x, y, z, t)、四つの主要な因子や分類など、構造を持つ四要素の組を表現する際に用いられる。

用例:

  • √’ay-oi (人間-四数) : 「四人の人間(特定のグループ、カルテット)」
  • √hĩb-oi (知識-四数) : 「四つの異なる分野からの知識の統合」
  • √mãl-oi (季節-四数) : 「四季(春夏秋冬)」

8.5 特定多数 (Specific Plural)

接辞: -i [i]

数自体が具体的な値を持つ、あるいは文脈から特定可能な多数の集まりを示す。個々の要素に意識が向く、あるいは話者と聞き手の間で共有認識のある集団を指す。不特定多数と対比され、より具体的な集団や、限定された範囲の対象に用いられる。

用例:

  • √’ay-i (人間-特定多数) : 「(あの)特定の複数の人々(例:会議室にいる人たち、私の友人たち)」
  • √rok-i (石-特定多数) : 「(あの)特定の複数の石(例:庭に積まれた石たち)」
  • √hĩb-i (知識-特定多数) : 「特定の専門分野に必要な複数の知識」

8.6 不特定多数 (Indefinite Plural)

接辞: -u [u]

数自体が不明、あるいは個々の要素に焦点を当てない、一般的な多数の集まりを示す。普遍的な真理や抽象的な概念を、その構成要素としての多数性で表現する場合に用いられる。ある種の全体性や、無数の散在する要素を包括的に指すことができる。

用例:

  • √’ay-u (人間-不特定多数) : 「人間たち(人類全般、人々)」
  • √b’wiy-u (動物-不特定多数) : 「動物(動物一般、様々な動物)」
  • √hĩb-u (知識-不特定多数) : 「様々な種類の知識、断片的な多くの知識」

8.7 分量数 (Partial Number)

接辞: -ã [ã]

離散的な整数では表せない、連続的な量の「部分」を示す。小数や分数で表現されるような、中途半端な量や、全体に対する比率を指す場合に用いられる。この接辞自体は「非整数的な量である」ことをマークするだけで、具体的な数値(例:1.5、1/3)は、文中に独立した数量詞(Numeral)として表現される。

用例:

  • √thauw-ã (水-分量数) : 「整数ではない量の水(例:1.5リットルの水、半分の水)」
  • √khĩm-ã (食べ物-分量数) : 「部分的な食べ物(例:ケーキの1/3)」
  • √hĩb-ã (知識-分量数) : 「断片的な知識、不完全な知識」