3. 語彙アスペクト (Lexical Aspect)

語彙アスペクトでは、動詞の基本的な意味的性質を定義する。これは行為や状態そのものの「タイプ」を示し、動詞が持つ固有のアスペクト的特性を規定する。第3スロットで表示する。

活用例

  • √ṭhak  「視覚情報/見る」
語彙相 接辞 ṭhak 意味
基底状態 -∅ ṭhak 視覚情報が存在する、自然と見える
結果状態 -ũl ṭhakũl 見えている状態である
瞬間状態 -ïb ṭhakïb 一瞬見える
確定状態 -oĩg ṭhakoĩg 確実に見える、見えていると確定する
継続活動 -æf ṭhakæf 活動として見る、観察する、眺める
達成活動 -iny ṭhakiny 見て理解する、発見する、見つける
瞬間行為 -ek’ ṭhakek’ 一瞬見る、ちらっと見る

3.1 基底状態 (Default Stative)

形式: -∅(接辞なし)

静的な状態や、変化しない性質を表す。行為の開始や終了、継続に焦点を当てず、単に「〜である」という存在や属性を示す。

例: √ṭhak [ṭʰak]「視覚情報が存在する、見える」

3.2 結果状態 (Resultative Stative)

形式: -ũl [ũl]

ある行為の結果として生じ、その状態が持続することを強調する静的なアスペクト。行為に明確な終点があるが、その結果としての状態は継続する。

例: √ṭhak-ũl [ṭʰakũl]「見えている状態である」

3.3 瞬間状態 (Momentary Stative)

形式: -ïb [ɪ̈b]

ごく一瞬だけ存在する静的な状態を表す。始まりと終わりが明確な、瞬間的な事象や認識に適している。一瞬で完結し、結果が持続しない。

例: √ṭhak-ïb [ṭʰakɪ̈b]「一瞬見える」

3.4 確定状態 (Definitive Stative)

形式: -oĩg [oɪ̃ɡ]

ある状態がある瞬間に確定し、それ以降は不動で変化しないものとなることを示す。疑いのない確実性を含む。一瞬で完結し、その結果の状態は固定される。

例: √ṭhak-oĩg [ṭʰakoɪ̃ɡ]「確実に見える、見えていると確定する」

3.5 継続活動 (Durative Activity)

形式: -æf [æf]

一定期間にわたって継続する動的な活動を表す。特定の終点を持たず、プロセスの持続に焦点を当てる。特徴: 活動が継続し、明確な終点がない。

例: √ṭhak-æf [ṭʰakæf]「眺める、観察する」

3.6 達成活動 (Accomplishment Activity)

形式: -iny [ɪɲ]

特定の目的や終点を持つ活動を表す。その終点に到達することで活動が完結する。継続する活動だが、明確な終点に到達すると完結する。

例: √ṭhak-iny [ṭʰakɪɲ]「見つける、発見する」

3.7 瞬間行為 (Punctual Act)

形式: -ek’ [ɛkʼ]

ごく一瞬で始まり、一瞬で終わる単発的な行為を表す。継続性や段階的なプロセスを含まない。瞬時に始まり終わり、持続しない。

例: √ṭhak-ek’ [ṭʰakɛkʼ]「ちらっと見る、一瞥する」