6. 時制 (Tense)

時制は、出来事が発話時を基準として時間軸上のどこに位置するかを示す。第6スロットに付加される。

時制 音素 意味
無時制 ∅/wø 普遍的な真理、法則
遠過去時制 wo 記録・伝説としての遠い過去
近過去時制 wi 経験的な、真理的に近い過去
現在時制 wa 絶対的な「今」、発話時点の集中
近未来時制 wu 実現性の高い、差し迫った未来
遠未来時制 we 抽象的・予測的な遠い未来

6.1 無時制 (Atemporal Tense)

形式: ∅(接辞なし)/ wø [wɔ]

行為や状態を、特定の時間軸に位置づけず、普遍的な真理、定義、恒久的な状態として描写する。時間の概念から完全に独立した事柄に用いられる。デフォルトとして接辞は付加しないが、第7スロットのデフォルト以外の法を明示する場合は $\text{wø}$ を用いる。

例: 「水は流れる(法則)」、「彼は人間である(普遍的な状態)」

6.2 遠過去時制 (Distal Past Tense)

形式: wo [wo]

出来事が発話者から心理的・歴史的に遠く切り離された過去に位置することを表す。個人の経験ではなく、記録、伝説、歴史といった客観的な情報として扱われる過去を指す。

例: 「古代の文明は海を渡った(歴史的記録)」

6.3 近過去時制 (Proximal Past Tense)

形式: wi [wi]

出来事が発話者に心理的・時間的に近い過去に位置することを表す。話者の個人的な経験として語られ、その結果が現在にも影響を与え得る、真理値の高い過去を指す。

例: 「彼はたった今、私に真実を語った(直近の経験)」

6.4 現在時制 (Present Tense)

形式: wa [wa]

出来事が絶対的な「今」、すなわち発話時点に最も集中した時間に起こっていることを表す。話者の個人的な時間軸における近接的な位置を示し、「発話の瞬間」そのものに焦点を当てる。

例: 「私は今、あなたを見ている」

6.5 近未来時制 (Proximal Future Tense)

形式: wu [wu]

出来事が発話時点から近い将来に起こることに焦点を当てる。実現性の高い、計画された、差し迫った未来を表現する。

例: 「明日の朝、船は出航する(計画済み)」

6.6 遠未来時制 (Distal Future Tense)

形式: we [we]

出来事が発話時点から遠い未来に起こることに焦点を当てる。実現性が低く、抽象的、あるいは予測的な未来を表現する。

例: 「千年後、人類は進化を遂げるだろう(抽象的予測)」