繋辞文 (Copular Sentences)

プリャンナにおいて、二つの項(名詞句)の関係性を示す「AはBである」といった文は、繋辞動詞 (Copular Verbs) を用いて表現される。これらの文は、繋辞動詞の種類に応じて、主語と補語に特定の格を要求する、統語論的に特殊な構造を持つ。

繋辞動詞の語根 (, , , など) は、形態論的には単一子音からなる機能語根(動詞)として扱われる。


1. 同値 (Equality)

二つの項が等しい関係にあることを示す。

  • 繋辞動詞: (〜である、〜に等しい)
  • 構文: [主題(題格)] [補語(同格)] ṭ
  • 主語の格: 題格 ('a) - 文の中心となる主題を示す。
  • 補語の格: 同格 (zi) - 主題と等価である対象を示す。

例文: 「人間というのは私とかあなたとか彼とかいうのである。」

  • プリャンナ訳: ahaa'a haazi pač̣a tač̣a ṭwal.
  • 構造:
    • ahaa'a: 人間-単数-題格
    • haazi: 私-単数-同格
    • pač̣a: あなた-単数-並列格
    • tač̣a: 彼-単数-並列格
    • ṭwal: (である)-wa(現在時制)-l(直説法)
  • 直訳: 「(主題である)人間は、私と等しく、そしてあなたと、そして彼と、である。」

2. 属性・関連 (Property / Relation)

ある主題が、特定の属性を持つ、あるいは別の項と相互に関連している状態を示す。

  • 繋辞動詞: (〜と関連する)
  • 構文: [主題(題格)] [関連対象(互格)] ṇ
  • 主語の格: 題格 ('a) - 文の中心となる主題を示す。
  • 補語の格: 互格 (čhye) - 主題と双方向的な関係を持つ対象を示す。

例文: 「人間は善と関連する。」

  • プリャンナ訳: ahaa'a wit'aačhye ṇwal.
  • 構造:
    • ahaa'a: 人間-単数-題格
    • wit'aačhye: 善-単数-互格
    • ṇwal: (と関連する)-wa(現在時制)-l(直説法)
  • 直訳: 「(主題である)人間は、善と相互に関連する。」

3. 起源 (Origin)

ある事物が、特定の起源から生じたことを示す。

  • 繋辞動詞: (〜から生じる)
  • 構文: [主体(自発格)] [起源(奪格)] ṣ
  • 主語の格: 自発格 (čhy) - 意図なく、自発的に状態変化する主体を示す。
  • 補語の格: 奪格 (ni) - 非物理的な起源・源泉を示す。

例文: 「存在から善が導かれる。」

  • プリャンナ訳: wit'aačhy eyaani ṣwal.
  • 構造:
    • wit'aačhy: 善-単数-自発格
    • eyaani: 存在-単数-奪格
    • ṣwal: (から生じる)-wa(現在時制)-l(直説法)
  • 直訳: 「善が、(自発的に)存在という起源から生じる。」

4. 所属 (Inclusion)

ある要素が、特定の集合の一員であることを示す。

  • 繋辞動詞: (〜に所属する)
  • 構文: [主題(題格)] [集合(同格)] ẓ
  • 主語の格: 題格 ('a) - 文の中心となる主題を示す。
  • 補語の格: 同格 (zi) - 所属する先の集合を、主題と等価なものとして示す。

例文: 「私は人間である。(私は人間という集合に所属する)」

  • プリャンナ訳: haa'a ahaaazi ẓwal.
  • 構造:
    • haa'a: 私-単数-題格
    • ahaaazi: 人間-単数-同格
    • ẓwal: (に所属する)-wa(現在時制)-l(直説法)
  • 直訳: 「(主題である)私は、人間と等しいものとして(その集合に)所属する。」