従属節 (Subordinate Clauses)
プリャンナにおいて、複文は主節(Matrix Clause)に従属節(Subordinate Clause)を埋め込むことで形成される。これは、一つの文全体を名詞化し、主節の項(主語、目的語など)として機能させることで実現される。
この構造は、主に以下の二つの要素によって構成される。
- 関係詞語根 (Relational Root): 従属節の導入を明示し、節全体の格を担う。
- 動詞核の名詞化 (Nominalization of Verb Nucleus): 従属節の動詞を名詞的形態に変化させる。
1. 関係詞語根 (Relational Root)
関係詞語根は、従属節の開始を標識(マーク)する機能を持つ、単一の子音からなる特殊な語根である。
- 語根: √j 「[関係詞語根]」
- 機能:
- 従属節の先頭に置かれ、文の境界を明確にする。
- 名詞トークンとして屈折し、数と格を持つ。格は、主節の動詞が要求する格を取る。
- 関係詞語根の「数」は、後続する従属節の数に対応する。
- 単数 (-a): 一つの従属節を導入する。
- 双数 (-ei): 二つの従属節を導入する。
- 不特定多数 (-u): 複数の従属節を導入する。
- 単独での意味:
- 関係詞語根 j が単独の名詞として用いられる場合、「情報」「命題」「言説」といった概念を意味する。
2. 動詞核の名詞化 (Nominalization of Verb Nucleus)
従属節内の動詞は、動詞核 (Verb Nucleus) と呼ばれる名詞化された形態を取る。これにより、節内の出来事全体が、一つの名詞的な概念として扱われる。
- 形態:
- 動詞核は、スロット1~7(語根、アスペクト、態、時制、法など)までの動詞的屈折を持つ。
- それに続き、スロット8(数)とスロット9(格)という名詞的屈折が付加される。
- この形態では、スロット10~12(証拠性、極性、語調)は通常付加されない。
- 動詞核の「数」の意味:
- 動詞核に付加される「数」は、その行為・出来事の捉え方を表す。
- 単数 (-a): その出来事を「一回きりの、単一のイベント」として捉える。
- 不特定多数 (-u): その出来事を「複数回行われる、習慣的なイベント」として捉える。
- 動詞核に付加される「数」は、その行為・出来事の捉え方を表す。
- 動詞核の「格」:
- 動詞核は、関係詞語根と同じ格を取る。
3. 構文例
例文: 「私は、あなたが水を飲んでいることを、知っている。」
-
- hapha jan papha tanan tacæfyeũmwalan ṭhahinyumwal.
この文は、以下のように構成される。
- 能格: hapha (私-単数-能格)
- 対格: jan papha tanan tacæfyeũmwalan (あなたが水を飲んでいること)
- 動詞: ṭhahinyumwal (知っている)
従属節の内部構造
主節の目的語として機能する従属節 jan papha tanan tacæfyeũmwalan は、それ自体がSOV構造を持つ。
- jan (関係詞):
- j (関係詞語根) + a (単数: 節が一つ) + n (対格: 主節の動詞「知る」の目的語)。
- 「~という一つの情報を」の意。
- papha (従属節能格):
- p (あなた) + a (単数) + pha (能格)。
- 「あなたが」の意。
- tanan (従属節対格):
- tan (水) + a (単数) + n (対格)。
- 「水を」の意。
- tacæfyeũmwalan (従属節動詞):
- tacæfyeũmwal (飲む-継続-進行-能動-現在-直説) + a (単数: 一回の出来事) + n (対格: jan と呼応)。
- 「飲んでいるという単一の出来事の」の意。