因格と刺激格
因格 (Causal Case)と刺激格 (Stimulative Case)は、どちらも「~によって」という原因を表すけれど、「引き起こす結果の質」において決定的な違いがある。
- 因格は、より広範で抽象的な「なぜそうなるのか」という理由や根拠を示す。
- 刺激格は、感情や感覚といった内的な状態に、直接的に働きかける具体的な「引き金」を示す。
因格 (Causal Case): 論理的・抽象的な「帰結」
原因の質: より抽象的、論理的、あるいは行動の動機となる「理由」や「根拠」を表す。意図的な行動の理由や、ある状態に至った論理的な背景を示す。
結果の質: 行為、現象、状態変化の論理的な「帰結」や、抽象的な結果を引き起こす。直接的な感覚や感情に作用するわけではない。
例:
- [努力]-因格 [彼]-動作主格 [成功する]-能動態 (努力によって彼が成功した)
- 「努力」は「成功」という行為の論理的な理由。
- [不注意]-因格 [事故]-主題格 [起こる]-中動態 (不注意によって事故が起こった)
- 「不注意」は「事故」という現象の原因となる状態。
刺激格 (Stimulative Case): 直接的・感覚的な「刺激」
原因の質: 感情や感覚、認識などを直接的かつ具体的に「引き起こす」要因を表す。五感に訴えたり、心に直接作用したりする性質がある。
結果の質: 必ず経験者格の項に、感情や感覚といった「刺激」を誘発する。物理的な状態変化を引き起こすわけではない。
例:
- [彼の声]-刺激格 [私]-経験者格 [驚く]-中動態 (彼の声によって私が驚いた)
- 「彼の声」は「驚き」という感情を直接的に誘発する刺激。
- [美しい景色]-刺激格 [彼]-経験者格 [感動する]-中動態 (美しい景色によって彼が感動した)
- 「美しい景色」は「感動」という感情を直接的に誘発する刺激。